"佐藤   実は、外交官試験に合格した、一応選りすぐられているはずの一流大学を出た外交官の卵たちを、モスクワの高等経済大学や、モスクワ国立大学の地理学部に留学させたら、成績不良で退学になる研修生が3、4人出てきたんですよ。このことが、私の愛国心をいたく刺激しましたね。
 私、モスクワ大学でも教鞭をとっていましたから、「なんでロシア人に、しかも日本の外交官の卵が負けるんだ」と言って、向こうの教務責任者に聞きに行ったんです。
 「ロシア語ができないのか?」と聞いたら、「そうじゃない。三つ問題がある」と言われました。一つ目が数学です。「なんで日本の大学で、経済学修士をとっているのにも関わらず、簡単な微分方程式が解けないんだ? 線形代数が全然わからないのか」と。
 そう言われてみると、数学を完全に迂回して経済学部に入ることってできるんですよね。それに今、明らかに大学院の入試って、大学入試より簡単ですから。そうすると修士号くらいとれちゃうんですよ。それから、「次に足りないのは何かと言われたら、哲学史だ」と。要するに、今起きている現象というのは、何らかの過去の思想の鋳型があるということをわかっていないと。
 そして、三番目に言われたのが「論理」なんですよ。要するに、ディベートが何か全くわかっていないと。これは、真理を追求するための議論ではなくて、一定の手続としての議論をする、ということなのだけれども、その中でごく初歩的な論理学がわかっていないということなんですね。要するに、直観主義だのといった難しい話じゃない。アリストテレスの古典的な同一律、矛盾律、排中律がわかっていない。だから、背理法の使い方がわからず、なぜあなたの議論が崩れているか、という話ができないから、全くディベートができないし、論理的に文を解析できない、ということを言っていたわけです。
 それで、実際のビジネスパーソン、あるいは外交官の論理力を強化するためには、出口先生の本を読むことが一番良いと確信するに至って、それでそういう需要が一番高い『東洋経済』、それから『朝日新聞』で紹介させていただいた、という次第なのです。"

佐藤優 日本の論理、そして思想を斬る (via usaginobike)

(出典: mcsgsymkojirobyから)